おまけ
 
 
穂香の場合
 
 僕は、姉さんに半ば脅された形で、姉さんの部屋に強制的に移動させられていた。
 一応服だけは着させてもらってるけど、まあ、すぐに無駄になる。
「……怒ってる?」
 姉さんも一応服を着てるけど、羽織ってる程度だ。これが風呂上がりじゃなければ、とても寒かっただろう。
「怒ってはいないけど……」
「よかった」
 姉さんは、本当に安心したように微笑んだ。
「ね、修ちゃん。修ちゃんは、お姉ちゃんのこと、好き?」
「好きだよ。嫌いになる理由がない」
 それは本音だ。僕は姉さんが好きだ。それは、奈々という彼女がいる今でも変わっていない。
 僕が小さい頃から懸命に尽くしてくれた姉さん。確かにかなり過激でその行為が煩わしく思うこともあるけど、それでもその裏側にある想いはちゃんと理解している。
 もし奈々とつきあっていなかったなら、僕は一生、姉さんの側を離れなかったかもしれない。
 僕にとっての穂香姉さんは、父さんや母さん以上に大切な家族であり、かけがえのない存在だから。
「お姉ちゃんもね、修ちゃんのこと、大好きよ。修ちゃんが、世界で一番大好き」
 そう言って姉さんは、僕に抱きついてきた。
「だからね、修ちゃん。お姉ちゃんと一緒に、気持ちよくなりましょう」
 姉さんの表情が、それまでの柔和なものから、妖艶なものへと変わった。
「ん……ふ……」
 そのままキスされた。
 姉さんとのキスは、はじめてではない。これまでも何度かしている。でも、今日のは違う。明らかにその意味合いが違う。
「ん、修ちゃん……」
 風呂上がりというだけでなく、それ以外の理由からも、姉さんの頬は上気して赤く染まっていた。
「……姉さん、無理してない?」
「……どうして?」
「なんとなく、そう思って。これでもさ、ずっと姉さんの弟をやってるから、わかるんだ、そういうの」
「…………」
 姉さんはわずかに俯いた。
「僕と姉さんは姉弟なんだから、焦る必要なんてないと思うよ」
「……それは、わかってる。わかってるの。でもね、修ちゃん。もう修ちゃんを好きな気持ちを抑えておけないの。だから──」
 悲壮な決意、とまでは言わないけど、それに近いものはある。
 きっとここで拒んでも、姉さんはあきらめないと思う。
 それが姉さんの姉さんたるゆえんだから。
「もしかしたら、途中で決意が鈍ってしまうかもしれないけど、それでもいい?」
「抱いて、くれるの?」
「こんな姉さんを、放っておけないから」
「……ありがとう、修ちゃん」
 それは言い訳にもならない。それでも僕は、奈々だけでなく、穂香姉さんも瑞香姉さんも柚香姉さんも悲しませたくない。それが、どんな理由でもだ。
 もしその解決方法がセックスだというなら、そうするしかない。
「ごめんね、ダメなお姉ちゃんで」
「ううん、そんなことないよ。姉さんは、最高の姉さんだよ」
 今度は僕からキスをした。
 そしてそのまま姉さんをベッドに押し倒した。
「修ちゃん……」
 潤んだ瞳が、真っ直ぐ僕を見つめている。
「触っても、いい?」
「いいよ」
 僕は、姉さんの胸に直に触れた。
「ん……」
 姉さんの胸は、とても柔らかく、とても滑らかで、ずっと触れていたくなる感触だった。
 大きさは、奈々と同じくらいかもしれない。
 今までもふざけて姉さんが僕に触らせたことはあったけど、こんな風に触れたのははじめてだ。
 円を描くように、ゆっくりと揉む。
「あ、ん……修ちゃん……」
 姉さんの口から、吐息が漏れる。
「お姉ちゃんの胸、どうかな?」
「すごく柔らかくて、ずっと触っていたいよ」
「そっか。よかった」
 姉さんにとって大事なことは、ほかの誰でもなく僕に認められることだから。
「修ちゃん、遠慮しなくていいからね。お姉ちゃんに遠慮なんて、必要ないから」
 それはつまり、僕の好き勝手にやっていい、ということか。
 僕は、姉さんの胸に顔を寄せた。
 さっきまで風呂に入っていたから、石けんの匂いがする。
 じんわりと温かさが伝わってくるようだ。
 そのまま僕は、乳首を舐めた。
「ひゃんっ」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫よ。ちょっと驚いただけ」
 まさか、姉さんのそういう反応を見ることになろうとは。
「続けてもいい?」
「いいよ」
 僕は、もう一度姉さんの乳首を舐めた。
「ん……ん……」
 姉さんは口元に手を当て、声が出ないようにしている。
 姉さんの乳首は、もうすっかり硬くなっていた。
「あ、んん、修ちゃん……」
「姉さん、感じてる?」
「うん、感じてる。だって、修ちゃんが触ってくれてるから」
 姉さんは、僕の前でだけはウソをつかない。
 もちろん、冗談交じりにウソっぽいことを言うことはあった。だけど、本当の意味でのウソは一度もない。
 だから、今の言葉もウソではない。
「あ、だけど、修ちゃん。胸だけじゃ、せつないの」
 それはつまり──
「お願い、修ちゃん」
 本当に、ここから先へ進んでいいのだろうか。
 僕と姉さんは正真正銘実の姉弟なのに。
「ね、修ちゃん?」
 そんな僕の気持ちを見透かしたかのように、姉さんは柔和な笑みでそう言った。
「迷っちゃうのはわかるよ。でもね、修ちゃん。お姉ちゃんは絶対に後悔しないから。もし修ちゃんがそのことに対してなんらかの責任を感じたなら、それを全部転嫁していいから」
「姉さん……」
「それとも、まずはお姉ちゃんがしてあげようか?」
「えっ……?」
「だから、修ちゃんのを、お姉ちゃんがしてあげるの」
 そう言うや否や、姉さんは体を起こし、反対に僕が押し倒された。
「見よう見まねだから、上手くできるかどうかはわからないけど──」
「無理しなくていいよ」
「ううん、無理なんてしてないわ。修ちゃんのだから、したいの」
 姉さんは、僕のトランクスを脱がせた。
「修ちゃんの、おっきいよね」
「し、知らないよ」
「そっか」
 自分のがどうなのかなんて、わからない。比べたこともないし。
「こうしてちゃんと見るのははじめてだけど、面白い形してるよね」
 姉さんは、僕のモノをもてあそんで楽しんでいる。
「これが大きくなったり小さくなったりするんだから、本当に不思議」
「……あの、姉さん」
「ん?」
「やっぱり無理してるんじゃ……?」
 姉さんが饒舌になる時は、不安を隠してる時が多い。
「……大丈夫よ」
 そう言って姉さんは、僕のモノにキスをした。
 それだけで僕のモノは反応してしまった。
「口に、入るかしら……?」
 大きくなったモノを、姉さんはそのまま口に含んだ。
「ん……」
 ねっとりとした唾液とザラッとした舌の感触が、とても気持ちいい。
「は……ん……」
 姉さんは、口の中では舌を使い、同時に頭を上下動させる。
 ぎこちない動きだけど、姉さんにされているということで、僕自身もずいぶんと高ぶっている。だから、あまり保たないかもしれない。
「ん……は、ん……ん……」
「ね、姉さん」
「ん、いいよ、我慢しないで」
 ダメだ。もう──
「くっ!」
「んんっ」
 僕は、姉さんの口の中に、思い切り精液を放った。
 姉さんは、その精液をそのまま飲み込んでしまった。
「ご、ごめん、姉さん……」
「ん……謝る必要なんてないよ。だって、修ちゃんのだから」
 それが当然とでもいう感じで姉さんは笑う。
「でも、あまり美味しくないね」
 ……正直すぎる。
「今度は、修ちゃんの番よ」
 そう言って姉さんは、自ら裸になった。
「……本当に、いいの?」
「修ちゃんだから、いいの」
「……うん」
 これ以上余計なことを言うのは、姉さんに悪い。
「触るよ?」
「うん」
 僕は、姉さんの秘所に触れた。
「ん……」
 秘所からは、わずかに触れただけで蜜があふれてきた。
「姉さん、こんなになってる……」
「うん。やっと、本物の修ちゃんのが入ってくると思ったら、そんなになっちゃったの」
「本物って……」
「あ、心配しなくても、お姉ちゃんはバージンよ。いつもは指とかだけだから」
「…………」
 そういうことをさらっと言わないでほしい。
「いつの頃からかね、修ちゃんのことを想ってオナニーしてた。修ちゃんにキスしてほしくて、触れてほしくて、バージンを奪ってほしくて。そう考えただけで、濡れちゃうの」
 そこまでだったなんて。
「だから、今すごく嬉しいの」
 恥じらいや不安もあるんだろうけど、それよりもなによりも、嬉しさの方が大きいのかもしれない。それくらい姉さんの僕に対する想いは深く、強いから。
 僕も、もっとちゃんと考えなくちゃいけない。
 そうしなければ、姉さんの想いに応えることはできないから。
「もう少しちゃんと触るね」
 僕は、改めて姉さんの秘所に触れた。
 指先で秘唇をなぞり、指で押し開き、わずかに中に入れた。
「んっ」
 姉さんの中は、とても熱く、狭かった。
 奈々の時も思ったけど、この中に入るなんて、想像もできない。
「やっ、んんっ」
 指を動かすと、姉さんはさらに感じた。
「修ちゃんっ、修ちゃんっ」
 湿った音が、僕の耳にまで届く。
「あんっ、んんっ」
 指を抜くと、指は蜜ですっかり濡れていた。
「はあ、はあ……」
 さすがの姉さんも、少し虚ろな表情だ。
「姉さん」
「ん、うん、いいよ、修ちゃん」
 僕は、ゴムをつけ、姉さんの秘所にモノをあてがった。
「いくよ」
「きて」
 そして──
「いっ……!」
 僕は、実の姉のバージンを奪った。
 姉さんの中は、本当に狭かった。
 もし僕もはじめてだったら、入れただけで出してしまっていただろう。
「大丈夫、姉さん?」
「だ、大丈夫よ」
 目尻に涙が溜まっている。
「この痛みはね、修ちゃんに迷惑をかけたお姉ちゃんに対する罰なの。だから、いいの」
「姉さん……」
 僕には奈々という彼女がいても、きっと死ぬまで姉さんはかけがえのない存在であり続ける。
 それは僕に与えられた使命でもある。
「それに、修ちゃんを中で感じられて、本当に嬉しいの」
 そう言って姉さんは僕の頬に手を添えた。
「修ちゃんは優しいから、お姉ちゃんのことを心配してくれてるんだよね。それも嬉しいよ。でも、言ったよね。遠慮しなくていいって。本当に遠慮しなくていいのよ。修ちゃんのしたいように、気持ちいいようにしていいから」
「でも、それだと姉さんが……」
「修ちゃん。お姉ちゃんは、修ちゃんのお姉ちゃんなんだよ? お姉ちゃんは、大切な弟のためなら、なんでもできるの。そして、その結果修ちゃんが喜んでくれたなら、それがそのままお姉ちゃんの喜び、幸せになるんだから」
 こういうところは、ずっと変わらない。たまに自分の欲望を先走らせることはあるけど、それでも基本的には僕を優先しようとする。
 僕はそれが余計にプレッシャーとなって、姉さんに対する気持ち、想いが歪む結果を生み出していた。
 でも、同時に理解もしていた。それは姉さんだったからそうなったんだと。
 僕は、本当に姉さんのことが好きだから。
「……ごめん、姉さん」
「どうして謝るの?」
「僕は結局、いつまで経っても姉さんの気持ちを理解してあげられないから」
「ん……そうだね。でも、それでいいと思うよ。だって、全部わかっちゃったら、いろいろ困っちゃうだろうし」
 はぐらかされた気もするけど、姉さんの言うように、それでいいのかもしれない。
 理解しようとしすぎて、深みにはまるのも問題だし。
「修ちゃん。もう大丈夫だから。動いていいよ」
 どうやら、話をして痛みを紛らわすというのも、気付いていたようだ。
「我慢できなかったら言って」
「うん」
 僕は、ゆっくりと腰を引いた。
「んっ」
 と、姉さんの顔が痛みで歪む。やっぱり、まだきついみたいだ。
「大丈夫だから」
 でも、姉さんは機先を制してそう言った。
 そう言われてしまうと、僕としてはどうしようもない。
 だから僕は、途中で止めることもなく、さらに動いた。
「ん……ん……あ……」
 姉さんの中は本当に狭いので、僕も保ちそうになかった。
 それでも、少しでも姉さんに感じてほしくて、耐えた。
「んんっ」
 そのおかげか、姉さんの吐息に少しずつ艶っぽさが出てきた。
 心なしか、姉さん自身も僕にあわせて動いているようだし。
「修ちゃん、気持ちよくなってきたの」
「もっともっと気持ちよくなって」
 僕は姉さんの腰をつかみ、さらに奥へと突き挿れる。
「んっ、あっ」
「姉さんっ」
「修ちゃんっ」
 そしてそのまま──
「くっ!」
 僕は姉さんの中で果てた。
「はぁ、はぁ……」
 そのまま力尽き、姉さんの脇に倒れ込んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。それより、姉さんは?」
「大丈夫大丈夫。最後はちゃんと感じられたし。全然平気」
 姉さんは、僕を抱きしめながらそう言った。
「修ちゃんのがね、お姉ちゃんの奥に届いた時に、すごく気持ちよかったし、なにより正真正銘修ちゃんに抱かれてるんだって実感できたの」
 笑顔で言う姉さんだけど、僕は未だに複雑な心境だ。
「それにね、もう無理かもしれないと思っていた女の悦びを体験できて、それもよかった。ただね、修ちゃん。お姉ちゃんね、ちょっとだけ物足りないかも」
「えっ……?」
「だからね、もう一回、しよ?」
 そう言いながら、僕のモノに触れ、ゴムを外し、また新しいのをつけようとしてる。
「ね、修ちゃん?」
「……わかったよ」
 ああ、僕はどうしてこう意志が弱いんだろう。
「今度は、お姉ちゃんがしてあげる」
 でも、心のどこかで、こういうのもありかもしれないと思ってる部分がある。
 それはやっぱり、相手が穂香姉さんだから。
 僕の大好きな、姉さんだから。
 
 
柚香の場合
 
「修ちゃんっ!」
 ある日の昼下がり。
 久しぶりに奈々と一緒に過ごさない休日ということで、本を読んで過ごしていた。
 そこへ、柚香姉さんがやって来た。
 しかも、なんか怒ってるっぽい。
「ど、どうしたの、姉さん?」
「修ちゃん」
 いきなり目の前まで来て、ずずいっと顔を近づけられた。
「正直に、ウソ偽りなく答えてね」
「な、なんのことかわからないけど、わかったよ」
 こういう時に下手に抵抗すると姉さんの思う壺だから。
「修ちゃん、穂香お姉ちゃんとセックスしたの?」
「えっ……?」
「さっきね、お姉ちゃんと話をしていて、たまたまそういう話になったの。最初はお姉ちゃんも誤魔化してたんだけど、そのうち誤魔化しきれなくなって。で、結局逆ギレ状態でそれを認めたの」
 い、いつかはバレるとは思ってたけど、まさか穂香姉さんの口からバレるとは。
「で、したのよね?」
「……うん」
「そっか」
 姉さんはそう言ったきり、黙ってしまった。
 柚香姉さんは、僕を除けば三人姉妹の一番下だから、昔からなにかと穂香姉さんや瑞香姉さんに対抗意識を燃やしていた。特に僕に対するものは顕著で、その影響が抱きつき癖だ。ようするに、姉さんたちに僕を渡したくないから、拘束しておくための行為でもある。
「修ちゃん。とりあえず抱き抱きする」
 姉さんはそのままいつものように僕を抱きしめた。
「……やっぱり修ちゃんは、お姉ちゃんが好きなの?」
「えっ、どういう意味?」
「だって、修ちゃんには奈々ちゃんというれっきとした彼女がいるわけでしょ。なのに、お姉ちゃんにも手を出した。修ちゃんの性格を考えれば、それがどれだけすごいことなのか、私もよくわかるの。もちろん、そうなってしまったのは主にお姉ちゃんのせいだとは思うけど。それでも、セックスはひとりではできないから。片方だけの都合でするのは、レイプだからね」
「…………」
「そしたら、考えられる理由はそう多くない。お姉ちゃんの修ちゃんに対する想いは、もうずっと変わってないから。あとは、それに対する修ちゃんの想いだけ。それがつまり、修ちゃんはお姉ちゃんのことが好き、っていうこと」
 姉さんの腕に、少しだけ力がこもった。
「私や、瑞香お姉ちゃんじゃ、ダメ?」
「……いいとかダメとか、そういう問題じゃないよ。僕にとって、姉さんたちは誰ひとり欠けちゃいけない存在なんだから。柚香姉さんのことも、好きだよ」
 穂香姉さんや瑞香姉さんに比べて極端なところが多い柚香姉さんだけど、それは不器用さの裏返しでもあるから。不器用で、なにもできないと思っているから、できることが極端になっている。
 僕は、それをちゃんと理解している。
「ね、修ちゃん。デートしよ」
「デート?」
「このままずっと修ちゃんに抱きついてるのもいいんだけど、気分転換にもなるからデートがいいかなって」
 僕の意志は無視ですか。まあ、いいけど。
「いいよ。デートしよう」
 
 ──で、デートに出たのはいいのだけど、それはもう大変だった。
 奈々とのデートでだいぶ慣れてきたとは思っていたけど、その認識は甘かった。上には上がいる。
 姉さんは、とにかく僕を振り回すだけ振り回し、同時に自分はちゃんと楽しんでいた。
 もしこれが僕じゃなく、正真正銘の彼氏だったら、よほどのことがない限りはデート後に別れるだろう。
 僕だって途中何度も逃げだそうと思った。でも、同じ家に住んでる限り、逃げ続けることは不可能なので、あきらめてデートを続けた。
「ん〜、今日はすごく楽しかった」
 姉さんは、まだ少し上気した表情で、そう言った。
「ごめんね、修ちゃん」
「えっ、なにが?」
「振り回しちゃって。私、わかっててやってたの。でも、それくらいしないと自分の気持ちに整理がつかないと思って」
 そういうことか。
「デートの最中は、余計なことを考えなくて済むから」
「いいよ。それで姉さんの気が済むなら」
「ありがと、修ちゃん。修ちゃんはやっぱり優しいね」
 まあ、さすがにこういうことを立て続けに何度もされれば、僕も拒むかもしれないけど。
「でもね、修ちゃん。結局、私の作戦は失敗しちゃった」
「失敗?」
「うん。だって、どれだけ誤魔化そうとしても、もう自分の想いを、気持ちを抑えることができないから」
 それはつまり──
「修ちゃん。私とセックスしよ」
「ええーっ!」
 そういうことだ。
「ね、いいでしょ?」
「だ、ダメだよ」
「どうして? 姉弟だから?」
「うっ……」
 それを理由にすると、穂香姉さんのことがあるから、絶対に納得してもらえない。
「私は、修ちゃんが弟だから好きなんだし、セックスしたいと思ってるの。もちろん、修ちゃんと姉弟じゃなかったとしても、そう思ってただろうけどね」
「…………」
「ね、修ちゃん?」
 きっと、穂香姉さんとしてしまった段階で、こうなることは決まっていたんだろう。
 なにより、今目の前でものすごく不安そうな顔をしているこの姉を、放ってはおけない。
 誰がそんな顔をさせているか。それは僕だ。
 僕がなんとかしない限り、ダメなんだ。
「後悔は、しないよね?」
「後悔? しないしない。するわけないって。むしろ、望むところって感じ」
 そう言って姉さんは笑った。
「修ちゃんこそ、後悔しない?」
「後悔は……少しだけすると思う。やっぱり、姉さんは姉さんだし。でも、それでも、姉さんの真摯な気持ちに応えてあげたいって思う。僕も、姉さんが好きだから」
「修ちゃん……」
 奈々に言わせたら、きっと甘いって言われると思う。
 僕もそう思う。でも、姉さんじゃないけど、姉弟だからなんだと思う。姉弟だからこそ、僕は姉さんに応えてあげたい。
 今までできなかったことを少しでもするために。
「よしっ! 話もまとまったし、早速行きましょ」
「行くって、どこへ?」
「ん、そんなの決まってるでしょ?」
 
「……なるほど」
 確かに決まっていた。
 姉さんに連れてこられたのは、ラブホテルだった。
 ラブホテル自体は、来るのははじめてではない。奈々とも来たことがある。
 だけど、まさかここへ姉さんと来ることになろうとは。
 一番スタンダードな部屋を選び、複雑な心境で部屋に入った。
「修ちゃんは、こういうところ、来たことあるの?」
「えっ、あ、うん、あるよ」
「ふ〜ん、そっか。奈々ちゃんと?」
「うん」
 奈々以外だったら、大変なことになる。
「やっぱりあれ? 家だと思い切りできないから?」
「う、うん……」
 以前、奈々の部屋でした時に、それをたまたま香奈恵さんに聞かれてしまったのだ。そのあとに香奈恵さんにあれこれ言われて、じゃあどこか気兼ねなくできるところでしようということになり、選んだのがラブホテルだった。
 まあ、その時はいつも以上に盛り上がってしまったのは、事実だけど。
「そうだよね。家だと、どれだけ気をつけても、気付かれちゃうもんね」
 そう言って姉さんは、意味深な笑みを浮かべた。
「えっと……一応聞いておきたいんだけど、姉さんも、気付いてた?」
「うん、もちろん」
「…………」
「だって、修ちゃんの部屋だって私たちと同じ二階にあるんだから。お互いの部屋を閉めきってたって、気付く時は気付くわよ」
 これからは、うちでも考えなくちゃダメだ。間違いなく。
「ああ、別にそれをどうこう言うつもりはないよ。だって、修ちゃんも奈々ちゃんも、したくてしょうがない頃だもんね」
 そういう理解のされ方は、イヤだった。
「さてと……」
 姉さんは、ベッドの前で立ち止まり、そのまま──
「って、なんで服脱いでるの?」
「なんでって、そのままするの?」
「い、いや、そうじゃなくて……」
 姉さんは、なにを今更という顔で服を脱いでいく。
 でも、よく見ると、姉さんの頬や耳が真っ赤になっている。
 なるほど。
「修ちゃんも──って、修ちゃん?」
 僕は、姉さんを抱きしめた。
「僕が言っても変わらないかもしれないけど、もう少し落ち着こうよ、姉さん」
「…………」
「姉さん、はじめてなんだから」
「で、でも……」
「今だって、少し震えてるんだから」
「…………」
「大丈夫だよ」
「……うん」
 小さく頷くと、姉さんの体から余計な力が抜けた。
 うん、どうやら大丈夫みたいだ。
「やっぱり、修ちゃんでよかった」
「ん、なにが?」
「私が好きになった人が、ってこと」
「姉さん……」
「修ちゃん……」
 僕たちは、キスを交わした。
「修ちゃんと、キスしちゃった」
 姉さんは、ほんのり頬を染め、嬉しそうに言う。
「姉さん、キスもはじめて?」
「ん、ん〜、はじめて、じゃないんだよね、これが」
「えっ、そうなの?」
「うん」
 誰かとつきあったことはないはずなのに、いったい誰とだ?
「気になる?」
「そりゃ、気になるよ」
「そうかそうか、気になるか」
 気にしてもらえたのが嬉しかったのか、姉さんは満面の笑みを浮かべている。
「じゃあ、教えてあげる。私のファーストキスの相手は……」
「うん」
「修ちゃんよ」
「えっ……?」
 僕?
「だって、今はじめてじゃないって」
「うん、今のははじめてじゃないよ。でも、以前に修ちゃんとキスしてるから」
「以前て……いつ?」
「ん〜、いつ頃だったかなぁ。もうそれなりに前になるけどね。修ちゃんが寝てる時に、何度かね」
「一度じゃないの? しかも寝てる間?」
「だってぇ、修ちゃんの寝顔が可愛くて、ついムラムラっときちゃって。で、我慢できなくなってしちゃったの」
 ……ダメだ。やっぱり柚香姉さんも同じだ。
 うちの姉さんたちは、どこかそういう常識が欠落している。
「……怒ってる?」
「怒ってないよ。ただ、ちょっとだけ呆れてる」
「むぅ……でも、修ちゃんだってそういう心境にならない? もしさ、奈々ちゃんがこう気持ちよさそうに寝てて、その寝顔がものすごく可愛くて。そしたら、こうなにかしたくならない?」
「……それは……」
 なるかもしれない。というか、なる。
「ほらね。だから、いいの」
 つぎはぎだらけの理論武装をしてはいるけど、所詮は屁理屈。まあ、ここでそれを追求しても意味がないけど。
「というわけで、もう一回」
 今度は、姉さんからキスしてきた。
「ん、気持ちいい……」
 好きな人とのキスは、とても気持ちいい。それは、奈々とのキスでよく知っている。
「修ちゃん……お願い……」
 そう言って姉さんは、ベッドに横になった。
 すでに上着とブラウス、スカートは脱いでいるので、下着姿だ。
「触るよ?」
「うん」
 僕は、ブラジャー越しに姉さんの胸に触れた。
「ん……」
 姉さんの胸は、とても柔らかかった。
 少し力を込めて包み込むように揉む。
「ん、ん……」
 いつもの姉さんには見られない、とても艶っぽい表情。
 そこにいるのは間違いなく実の姉なのに、そう見られなくなってきてる。
 穂香姉さんの時もそうだったけど、そういう理性が麻痺してしまう。
「修ちゃん……」
 とても切なげな眼差し。
「姉さん。取ってもいい?」
「いいよ」
 僕は、姉さんのブラジャーを外した。
 抑圧されていた胸が、息を吹き返したように揺れた。
「そ、そんなにじっと見つめちゃダメ……」
「姉さんが、綺麗だから」
「も、もう……バカ……」
 いつも強気というか、クールというか、つかみどころのない表情が多い柚香姉さん。
 その姉さんが、ひとりの女性の顔になっている。
「姉さん。すごくカワイイよ」
「だ、だから、修ちゃん。そういうこと、言わないでよ……」
「すごくカワイイから、止められない」
「えっ……?」
 僕は、そのまま胸にむしゃぶりついた。
「や、あ、ん……」
 スベスベの肌が、とても気持ちいい。
 柔らかな胸に頬を寄せただけで、ずっとそのままでいたくなる。
 顔を寄せながらも、手では胸を揉んでいる。
 次第に乳首が硬くなってきた。
 僕は、その乳首を舌で舐めた。
「ひゃんっ」
 舌先で転がす度に──
「んんっ」
 姉さんは甘い吐息を漏らす。
「しゅ、修ちゃん……ダメ、気持ちよすぎ……」
 姉さんももう正常な判断はできていないのかもしれない。
「姉さん。こっちも、いい?」
「うん……」
 僕は姉さんに確認して、下半身に手を伸ばした。
 ショーツ越しに、秘所に触れた。
「んんっ」
 軽く触れただけで、奥から蜜があふれてきて、ショーツが濡れた。
「姉さん。もうこんなになってる」
「だ、だって、すごく気持ちいいんだもん……」
「このままだとつらいだろうから、脱がすね」
 少しだけはやる気持ちを抑えながら、ショーツを脱がせた。
「やっぱり、すごく綺麗だよ、姉さん」
「嬉しい……」
 本当に綺麗だ。
 姉さんたちはみんな綺麗だけど、それぞれその綺麗さが違う。
 穂香姉さんは年齢相応の大人の綺麗さ。
 瑞香姉さんは無意識のうちの色気のある綺麗さ。
 そして、柚香姉さんは少しだけ少女の部分を残した綺麗さ。
「今度は、こっちに触るね」
 僕は、姉さんの秘所に触れた。
 すでに十分すぎるくらい濡れている秘所。指で触れただけで、また蜜があふれてきた。
「ん、あんっ」
 触れる度に体がピクピク反応する。
「修ちゃんの指が、んんっ、私の中に、あんっ」
 姉さんの中は、とても熱く、狭かった。
 僕は、さらに十分すぎるくらい姉さんの秘所をいじった。
 これくらいしておけば、多少はましなはずだ。
「はあ、はあ……修ちゃん……」
「姉さん。そろそろいい?」
「うん、いつでもいいよ」
 僕も服を脱ぎ、すでに大きくなっているモノにゴムをつけた。
「いくよ」
「うん」
 モノを秘所にあてがうと、姉さんは目をギュッと閉じた。
 僕は、軽く姉さんの頬を撫で、そのままモノを突き挿れた。
「いたっ……!」
 姉さんの体がよりいっそう堅くなる。
 でも、ここでやめるのは姉さんに悪い。だから──
「んっ、くっ!」
 僕は、姉さんの一番奥まで挿れた。
「姉さん……」
「大丈夫……大丈夫だから……」
 姉さんは、目の端に涙を溜めながら、必死に笑顔を作ろうとする。
 どうして姉さんはこうも健気なんだろう。
 三人姉妹の中で、一番健気だと思う。たぶん、一番不器用だから。
 だから僕は、姉さんの抱きつき癖にも多少の文句は言いつつも、為すがままなのだ。
「修ちゃんのが、私の中でピクピク動いてる」
「姉さんの中、すごく気持ちいいよ」
「私も、気持ちいい」
 動かずにただじっとしてるだけなのに、僕のモノは姉さんに締め付けられている。
 それはあたかも姉さんの中が別の生き物で、まったく別の意志で動いているかのような感覚だ。
「ん……修ちゃん、動いていいよ。そのままだとつらいでしょ?」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だから」
「わかったよ」
 僕は、ゆっくりと腰を引いた。
「んっ」
 少しはましになったと思うけど、まだ痛みの方が大きいのかもしれない。
 姉さんの眉間からしわが消えない。
 できるだけ姉さんの負担にならないように、ゆっくりと動かす。
「ん、はっ……」
 僕の方はそれだけでも十分に気持ちよかった。
 気を抜けば、すぐにでも果ててしまいそうだ。
「修ちゃん、修ちゃんっ」
 姉さんは僕をしっかりと抱きしめ、僕を呼び続ける。
「姉さんっ」
 次第に僕の方も歯止めが利かなくなってきた。
「いいよ、修ちゃんっ、もっともっと突いてっ」
「姉さんっ、柚香姉さんっ」
「修ちゃんっ、修ちゃんっ」
 もう姉さんを気遣う余裕もない。ただひたすらに姉さんの中を蹂躙し続ける。
「んんっ、修ちゃんっ」
「くっ、お姉ちゃんっ」
 そして、僕はそのまま姉さんの中で果てた。
「はあ、はあ……」
「姉さん……」
「修ちゃん……ありがとう……」
 姉さんは、最高の笑みを浮かべて僕にキスした。
 
「そういえば、修ちゃん」
「ん、どうしたの?」
 セックスのあとの気怠い雰囲気の中、僕は姉さんを胸に抱きながら聞き返した。
「さっき、私のこと、お姉ちゃん、て呼んでくれたね」
「あ、あれはその……つい……」
「修ちゃんにそう呼ばれるのって、いつ以来かしら?」
 僕が姉さんたちを『姉さん』と呼ぶようになったのは、反発心があったからだ。
 必要以上に、執拗に構いたがる姉さんたちに、なにか嫌がることをしたかった。でも、まともにやっても絶対に返り討ちに遭うだけ。だから、呼び方を変えた。
 それまで『お姉ちゃん』と呼ばれるのが当たり前だったのだから、それはもう大変だった。穂香姉さんなんか、僕が頭でも打っておかしくなってしまったんじゃないかって、病院に連れていこうとしたくらいだ。
「嬉しかったなぁ……」
「…………」
「私ね、いつもお姉ちゃんたちが羨ましかったんだ」
「羨ましい?」
「特に穂香お姉ちゃんがね。だって、お姉ちゃんて修ちゃんに対してだけは、いつも素直で真っ直ぐで、自分を隠そうなんて思ってもいなかったから。私は、そこまでにはなれなくて。でも、いつもいつもお姉ちゃんみたいにできればって思ってた」
 そういう羨ましいか。でも、柚香姉さんが穂香姉さんみたいにならなくてよかった。もしそうなっていたら、僕はあの家を出なくちゃいけなかった。
「だから、せめて修ちゃんと一緒にいられる時はできるだけ側にいようと思って、それで修ちゃんを抱き抱きするようになったのよ」
「そっか」
「でも、これからは修ちゃんを抱き抱きすると、したくなっちゃうかも」
「えっ……?」
「だって、修ちゃんがこれだけ力強くて、素敵な男の人だってわかっちゃったから。そしたら、普通はそういう気持ちになるでしょ?」
「な、ならなくていいよ」
 抱きつかれる度にいちいち発情されたら、僕が保たない。しかも、その場に奈々や穂香姉さんがいたら、とんでもないことになる。
「ま、冗談はさておき、修ちゃん」
「なに?」
「本当にありがとうね。私のお願いを聞いてくれて」
「ううん、いいよ。ほかならぬ姉さんのお願いなんだから」
「本当はね、断られてもいいと思ってたの。だって、私自身も無茶なお願いしてるってわかってたから。ただ、もし可能ならそうしてほしいと思って、わずかな可能性に賭けたの。そしたら、修ちゃんは私のお願いを聞いてくれた。だから、すごく嬉しかった」
「姉さんだったから」
「それが本当なら、もっと嬉しいけどね」
 たぶん、ここでこれ以上言葉を重ねても姉さんは信じてくれないだろう。
 だから、僕は黙って姉さんを抱きしめた。
「そうだ。修ちゃん。今日の最後に、もうひとつだけお願いがあるんだけど」
「ん、なに?」
「もう一回、しよ? まだできるよね?」
「で、できるけど……」
「だったら、いいよね?」
 そう言いながら姉さんは僕のモノに触れてきた。
 軽く握られ、しごかれると、すぐにモノは大きくなってしまった。
「私は、修ちゃんだけのものなんだから。修ちゃんは、私になにをしてもいいんだよ」
「それは、できないよ」
「どうして?」
「だって、僕だけなんておかしいよ。やっぱり姉さんだってこうしたいっていうのはあるはずなんだから。お互いがお互いを尊重しないと意味ないよ」
「……じゃあ、修ちゃん。私をめちゃくちゃになるくらい、いっぱい抱いて。今は、そうしてほしい」
「うん、わかったよ」
 姉さんが笑顔でいてくれるなら、そのくらいのことは言うことを聞いてもいいだろう。
 もう一線を越えてしまったんだから、今更だ。
 ついでに、もうひとつだけ、姉さんを喜ばせてあげようかな。
「姉さん」
「ん?」
「大好きだよ、柚香お姉ちゃん」
「修ちゃん……私も大好きよ、修ちゃん」
 姉さんの最高の笑顔が見られて、本当によかった。
 
 
瑞香の場合
 
 それは、だいぶ寒くなってきた秋の日の夜のことだった。
 受験勉強のペースもだいぶつかめるようになり、以前ほど勉強自体がつらくなくなってきた。だから、相変わらず余裕はないけど、それでも多少の精神的な安定感は出てきていた。
 英語の参考書との格闘を終え、僕はベッドに倒れ込んだ。その参考書を今日までに終わらせるのは、奈々との約束だった。
 奈々とのつきあい方も以前に比べてかなり慣れてきたこともあり、少しずつだけど僕だけの時間も持てるようになってきた。その時間が、この勉強のあとのわずかな時間だった。
 学校はあるのであまり遅くまでは起きていられないけど、それでもやり繰りすればなんとかなることを学んでいた。
 姉さんたちも、そんな僕の状況を理解してくれているので、あまり構わないでくれる。その些細な心遣いが嬉しくて、以前よりも僕の姉さんたちに対する態度は変わったと思う。
 まあ、そのせいでたまに奈々の機嫌が悪くなるのは、さすがに勘弁してほしいけど。
 ただ、それもたまになので、基本的には以前よりも僕の生活はとても穏やかで安定したものになっていた。
 今日も勉強の疲れから少しうとうとしていると、遠慮がちにドアがノックされた。
「はい」
「修ちゃん、ちょっといいかな?」
 声の主は、瑞香姉さんだった。
「いいよ」
 姉さんが入ってくる前に、ベッドの上に体を起こした。
「あ、今日はもう勉強終わり?」
「うん。ちょうど終わったところ」
「そっか。ちょうどよかったんだ」
 姉さんは嬉しそうにそう言って、僕の隣に座った。
「それで、どうしたの?」
「ん、うん、久しぶりに修ちゃんと一緒にいたいなって思って」
 久しぶり、というのはウソではない。このところ僕は受験勉強、姉さんは大学院での研究が忙しくて、姉弟水入らずの時間がほとんどなかった。
 穂香姉さんや柚香姉さんと同じで、瑞香姉さんも僕を溺愛してるから、そういう時間はとてももどかしいのだろう。時折切なげな眼差しを僕に向けてきていた。だけど、お互いにやるべきことをうっちゃってというわけにはいかないので、自然と一緒の時間は少なくなっていた。
「修ちゃん」
 と、姉さんが自分の膝を叩いてなにかをアピールしている。
「なに?」
「膝枕、してあげる」
「えっ、い、いいよ、別に」
「いいから。ね?」
 姉さんは、少しだけ強引に僕を引っ張った。
「わ、わかったよ」
 このままだと押し問答になりそうだったから、とりあえずこっちが引くことにした。
 姉さんの膝に頭を載せる。柔らかな感触は、枕とはまた違った感触だった。
 そういえば、奈々とこういうことあまりしたことなかった。まあ、別にそれがどうということはないんだけど。
「勉強は大変?」
「まあ、大変だよ。でも、それはこれまでやってこなかったからだから、しょうがないよ」
 今までのツケがここに来てるだけなんだから、自業自得だ。それに、これを乗り越えなければ春から奈々と一緒の大学へ行けなくなる。それだけはなんとかしなければならない。
「わからないことがあれば、いつでも聞いてくれていいんだよ? これでもまだ現役なんだから」
 確かに現役の大学院生だから、穂香姉さんよりはなんでも聞ける。ただ、僕は極力姉さんたちの力を借りないようにしていた。
 借りようと思えばいくらでも貸してくれる三人だけど、そうするとどうしても自分たちの本来やるべきことがおろそかになる可能性がある。そうさせるのは本意ではない。その点奈々は同じ受験生だから、遠慮なくできる。だから、僕は奈々と一緒に勉強している。
 ただ、僕からとにかく頼りにされたい姉さんたちにとっては、物足りない状況になっている。
「うん。その時が来たら頼りにしてるよ」
 だから、今はこうとだけ答えておく。
 姉さんは、僕の髪を撫で、とても上機嫌だ。これだけ機嫌のいい姉さんを見るのは久しぶりの気がする。
「なんか、すごく機嫌いいね」
「ん、そうかな?」
「うん。なにかいいことあった?」
「ん〜、そうだね。あったよ」
「へえ、そうなんだ」
「気になる?」
「ん、そりゃ気になるよ」
「そっか。ふふっ」
 本当に今日は上機嫌だ。
「私が機嫌がいいのは、こうして修ちゃんと一緒にいるからだよ」
「それだけ?」
「それだけって、私にとってはそれに勝ることなんてなにもないよ。修ちゃんだって、それはわかってるはずだよ」
「まあ、そうだけど」
 そりゃ、わかるよ。うちの姉さんたちは揃いも揃って重度のブラコンだから。
「だから、私は機嫌がいいの」
 どういう理由でも、機嫌がいい方が悪いよりいいに決まってる。特に、姉さんたちは。
「……修ちゃん、かっこよくなったよね」
「ん、そうかな?」
「うん、すごくかっこよくなった。やっぱり、奈々ちゃんのおかげかな」
 奈々にもたまに言われる。でも、自分ではそんなことは全然思えない。
「よく言うもんね。男の人は守るべきものができるとかっこよくなるって。修ちゃんもそうなったんだね」
「……状況としてはそうかもしれないけど、まだまだだよ。まだ僕は奈々を守れるまでには至ってないよ」
 本当にそう思う。今でも僕は奈々に助けられてばかりだ。奈々の側にいることで奈々も安心感を得られているようだけど、それ以上にはまだなれていない。
 もちろん、それまでがマイナスだったからそう簡単にプラスにはならない。一足飛びなんて無理なことはせず、コツコツと行くしかない。
「修ちゃんなら大丈夫だよ。絶対に大丈夫」
「ありがとう、姉さん」
 今までもそうだったけど、なにかあった時に僕を助けてくれるのは、やっぱり姉さんたちだ。奈々もそういう存在ではあるけど、今はまだ姉さんたちに一日の長がある。
 僕もそんな姉さんたちに甘えすぎないようにしないと。
「ね、修ちゃん。今日、一緒に寝ようか?」
「えっ、一緒に?」
「うん。たまにはいいでしょ?」
 確かに、瑞香姉さんはそういうことを滅多に言わないから、たまにはいいのかもしれない。これが穂香姉さんや柚香姉さんだったら、断っていただろう。
「いいよ。一緒に寝よう」
「あはっ、ありがと、修ちゃん」
 
 それぞれ風呂に入り、揃ってベッドに入ったのはそれから約二時間後だった。
 僕の部屋か姉さんの部屋か、選ぶのに少し時間がかかったけど、結局は僕の部屋になった。
 僕のベッドは普通のシングルベッドなので、ふたりで寝ると狭い。だから、当然かなり密着していないと落ちてしまう。奈々と寝る時も、いつもそうだ。
 姉さんは僕のあとに風呂に入り、それからそれほど時間が経っていないので、まだ体が温かかった。
「ん、修ちゃんの匂い……」
 姉さんは、僕の胸に顔を埋め、匂いを嗅いでいる。一応僕も風呂に入ってるから、匂わないと思うんだけど。
 一方、僕の方は姉さんにしっかりと抱きしめられている状況で、そのとても存在感のある胸がしっかりと当たっている。もし僕に多少なりとも免疫がない状況だったら、すぐに困ったことになっていただろう。
 図らずも穂香姉さんと柚香姉さんを抱いてしまった僕だけど、瑞香姉さんとはそうならないように細心の注意を払っていた。別に瑞香姉さんのことが嫌いなわけじゃなくて、姉さんまで抱いてしまったら、ますます僕の立場がなくなるからだ。
 だけど、姉さんたちは背格好がそれほど変わらないのに、胸の大きさだけは差があった。それも大きな差ではないんだけど、ずっと見ているとその差に気付くくらいではあった。
 で、三人の中で一番胸が大きいのは、瑞香姉さんだ。普段は体型を誇示するような格好はしないからわかりづらいけど、家族の前でしか見せないそういう格好の時には、それがよくわかる。
 それに、僕は姉さんにもよく抱きしめられているから、感触としてもわかっている。
「こうしていると、修ちゃんも本当に大きくなったよね。私なんか、すっぽり腕の中に収まっちゃうもの」
 姉さんも特別小柄ではないけど、まあ、女性だから男の僕から見れば小さい。
「ちっちゃな頃は、私もよく修ちゃんを抱っこしたんだけどなぁ」
 僕と姉さんは六つ違いだから、確かにそんなこともあった。とはいえ、僕が小学校に入った時に、姉さんは中学に入ったばかりだから、抱っこといってもやっとの感じだったけど。
「それがいつの間にか、これだけ大きく、立派に成長したんだよね」
 立派かどうかはわからないけど、とりあえず人並みには成長できた。
 それもこれも、姉さんたちのおかげでもある。
「でも、どれだけ大きくなっても、修ちゃんが私の大事な弟に変わりはないんだから」
「うん、そうだね」
 僕にとっても、姉さんが大切な姉さんであることは変わらない。
「……ね、修ちゃん」
「ん?」
「修ちゃんは、やっぱりお姉ちゃんが好きなの?」
「えっ……?」
 なんか、前にも同じような質問をされた気がする。あれは、柚香姉さんだったか。
「だって、修ちゃん、いつもお姉ちゃんを優先するから」
「別に優先してるつもりはないよ。ただ、穂香姉さんは長女だから、自然と順番が最初になってるだけ」
「もしそれが本当だとしても、それはあまりたいした理由にはならないよ」
「どうして?」
「だって、それって無意識のうちにそう考えてるってことだから。つまり、私や柚ちゃんよりも気にかけている、ということになるでしょ。だから……」
 そういう風に言われると返す言葉もない。
「それに、好きじゃなかったら、お姉ちゃんを抱かないでしょ?」
「えっ……?」
「私、ちゃんと知ってるんだよ。修ちゃんとお姉ちゃんが、エッチしてたの」
 柚香姉さんにバレてた時点で瑞香姉さんにもと思ってたけど、本当だった。しかも、こんな場面で言われた。
「それに、これは憶測でしかないけど、修ちゃん、柚ちゃんともエッチしたでしょ?」
「…………」
「一時期、柚ちゃんがものすごく機嫌がいい時があって、しかも家にいて修ちゃんが側にいる時は、ずっと目で追ってたから。これはなにかあったってすぐにわかったよ」
 瑞香姉さんはそういうことに疎い方だと思っていたけど、どうやら違ったらしい。
「お姉ちゃんも柚ちゃんもいいのに、私だけダメなんていうこと、ないよね?」
 まさかとは思ったけど、姉さんまでそんなことを言うなんて。
「あのね、修ちゃん。私もね、修ちゃんとエッチしたいの。修ちゃんに迷惑がかかるってわかってるんだけど、それでもしたいの」
 姉さんの腕に、少し力がこもった。
「……これを姉さんだけに訊くのは間違ってるのかもしれないけど、どうしてもしなくちゃいけないことなの? そりゃ、その行為そのものが愛情表現のひとつであることには異論はないけど」
「そういう風に言われると答えに困るけど」
「別にセックスしなくても、僕は姉さんのこと、好きだよ。嫌いになんてならないよ」
「……うん、それもわかってる。わかってるよ」
 姉さんも、軽い気持ちで言ったのではないことくらいわかってる。相当考えて、その上で答えを出してここに至ってるはずだ。
 できることなら僕もそれに応えてあげたいけど、その内容がセックスというなら話は別だ。
「……どうしても、ダメ?」
「いくら姉さんの頼みでもそれだけは。今更かもしれないけど、奈々に申し訳なくて」
「……そっか」
 これであきらめてくれればいいけど。
「……本当は、こんなことしたくなかったけど」
 そう言って姉さんは──
「ちょ、ちょっと姉さん」
 僕の股間に触れてきた。
「だって、修ちゃんがお願いを聞いてくれないから」
「だ、だからってこんな……」
「私だけ除け者なんて、イヤなの」
 それが一番大きいのか。
 確かに、三人姉妹で瑞香姉さんだけ違うというのは、納得できないことなのかもしれない。僕にはそこまではわからないけど。
「私だって、修ちゃんのこと本気で好きなんだから」
「…………」
 ……これは、穂香姉さん、柚香姉さんと立て続けに受け入れてきた僕への罰なのかもしれない。
「後悔は……するわけないか」
「……修ちゃん?」
「ごめん、姉さん。姉さんだけないがしろにするつもりはなかったんだよ。ただ、もし姉さんともしてしまったら、僕はますます姉さんたちから離れられなくなると思って。今は奈々という彼女がいるのにそれじゃあ問題あるし。だから、ね」
「ふふっ、修ちゃんらしい心配だね」
「でも、ここで僕が頑なに拒んで、姉さんが無理矢理してしまったら、絶対に後悔するから。僕も、姉さんも。これから先も姉弟であることは変わらないんだから、そんな状況でこれから生きていくなんて、イヤだから」
「修ちゃんは、やっぱり優しいね。そうやって少しでも私の負担にならないようにしてくれてる」
「そんなことないよ、やっぱり一番考えてるのは、自分の身を守ることだけなんだから」
「だとしても、嬉しいよ」
 瑞香姉さんだけじゃなく、穂香姉さんも柚香姉さんも、たとえ僕が僕のことを優先したとしても、絶対になにも言わない。それが当然だと思ってる。その上で、自分たちのことをほんの少しでも気にかけてくれさえすれば、言うことなし、という感じだ。
 だから、その理論で突き崩すのはとうてい無理だ。
「抱いて、くれるんだよね?」
「うん」
「ありがと、修ちゃん」
 そう言って姉さんは、僕にキスしてきた。
 そういえば、瑞香姉さんとキスしたの、はじめてかも。
「ん、修ちゃんとちゃんとキスするの、はじめて」
「ちゃんとって……まさか……」
「えへっ」
 ……ああ、やっぱり瑞香姉さんもだったのか。どうしてこううちの姉さんたちはそういう常識が欠落してるんだろう。
「だってだって、修ちゃんがあまりにも可愛くて、ついふらふら〜っと」
「……もういいよ。僕も全然気付いてなかったわけだし」
 気付いてたら気付いてたで、かなり大変なことになってたと思うけど。
「これからは、そういうことはしないで、ちゃんと修ちゃんの了承を得てからするね」
 これからがあるんだ。そうなんだ。
「修ちゃん、もう一回」
 姉さんは、もう一回と言いつつ、何度もキスを繰り返した。
 気がつくと、口のまわりが唾液だらけになっている。
「修ちゃん……」
「姉さん……」
 もう一度キスした。
「修ちゃんに任せてもいいのかな?」
「どっちでもいいけど。姉さんはどうしたいの? どうされたいの?」
「ん、私は修ちゃんにしてほしい」
「わかったよ」
 掛け布団をよける。
「脱がせるね」
「うん」
 姉さんのパジャマに手をかけ、まず上を脱がせた。
「つけてなかったんだ」
「あ、うん。寝る時は苦しいから」
 姉さんはブラジャーをつけていなかった。いきなりそれが目の前に現れ、少しだけ驚いた。
 だけど、改めて直に見ると、大きい。胸の大きさにこだわりはないけど、これはこれで悪くないと思う。
「へ、変、かな?」
「あ、いや、変なところなんてないよ」
「ホント?」
「うん。すごく綺麗だよ、姉さん」
「嬉しい。誰に褒められるより、修ちゃんに褒められるのが一番嬉しい」
 姉さんは本当に嬉しそうだ。
「あと、姉さんて胸大きいよね?」
「えっ、そ、そうかな?」
 姉さんは言われてすぐに胸を隠した。
「ひょっとして、気にしてた?」
「そんなことはないけど……ただ、あまり嬉しくはないかな」
「どうして?」
「だって、じろじろ見られるから」
「ああ、そういうことか」
 確かに、普通の男なら胸の大きな人に目が行く。もちろん、好き嫌いはあるだろうけど。
 いわゆるそういう好奇の目にさらされ続けていれば、そういう風に思ってしまうのも仕方がない。
 そういえば、姉さんは比較的ゆったりとした服装が多い。なるほど、それにもちゃんと理由があったというわけか。
「……修ちゃんは、大きい方が好き?」
「別にどっちということはないよ。胸を好きになるわけじゃないんだから」
「そっか」
「ただ、僕は姉さんの胸が大きくてよかったと思ってるよ」
「どうして?」
「だって、その方が抱きしめられた時、気持ちいいから」
「んもう、修ちゃんのエッチ」
 その理由は今考えたものだけど、まあ、あながちウソではないから。それに、姉さんが自分の胸にコンプレックスのようなものを持っていたとしたら、やっぱり悲しいことだから。それを僕がなにか言うことで、取り除くことはできなくても、軽くさせられればと思う。
「でも、ありがとう」
 さすがに気付いてたか。わかりやすかったし。
「触ってもいい?」
「うん、いいよ」
 まずは軽く触れる。
 服越しには触れたことはあったけど、直に触れるとやっぱり全然違う。
 とにかくずっと触れていたくなるくらい気持ちいい。
 肌はスベスベで、だけど、瑞々しさはちゃんとあって、吸い付くような錯覚さえ与える。
 柔らかさもまた格別で、マシュマロのような柔らかさだ。それでも適度に弾力もあって、それが余計にずっと触れていたくなる感覚を起こさせている。
「こうしてるだけで、すごく気持ちいいよ、姉さん」
「修ちゃんが喜んでくれるなら、いくらでも触ってていいよ」
 瑞香姉さんだけじゃなく、穂香姉さんも柚香姉さんも僕がずっと触っていたいと言ったら、それこそ一日中でも触らせてくれるだろう。だから、あまり軽はずみなことは言えないけど、どうしても出てしまう本音というものがある。
 その本音を適度に抑えつつ接していかないと、その三人とはつきあっていけない。
「ん、あん……」
 手のひらが乳首に触れると、姉さんは控えめながら声を上げた。
 少し手に力を込め、胸の形が変わるくらい揉む。
「ん、ん」
 姉さんは、できるだけ声が出ないよう、口元を手で押さえている。
「姉さん。声出してもいいんだよ」
「で、でも……」
 そりゃ、ここは完全防音の家ではないから、あまり大きな声だと聞こえてしまう。それでも、無理に抑え込んでほしくないのだ。
 それに、この二階にいるのは僕たちのほかは、穂香姉さんと柚香姉さんだけ。このふたりになら、聞こえても大事にはならないはず。
「ん、じゃあ……」
「や、ダメ、修ちゃん」
 僕は、少しだけ意地になって、姉さんの乳首を舐めた。
「ん、や、だ、ダメだよ、修ちゃん……そ、そんなにしちゃ」
 身悶える姉さん。
 先のふたりの時もそうだったけど、姉さんのこういう姿を見ると、思考能力が著しく低下してしまう。それくらい衝撃的なことだ。
 でも、それは僕がしたことに対する反応なので、より複雑な心境だ。
 姉さんの乳首はもうすっかり堅くなり、吸うこともできる。
「しゅ、修ちゃん……」
「どうしたの?」
「あ、あのね……すごくせつないの……」
 そう言いながら姉さんは、しきりに体をよじっている。
「どうしてほしいの?」
 少しだけ意地悪してみたくなった。
「い、いぢわる言わないで……」
 今にも泣き出しそうな顔。普段なら絶対に見られない顔だ。
「ごめん、姉さん。少し意地悪だったね」
 僕は、姉さんの髪を撫でながら、お詫びのキスをした。
「でも、いいの?」
「うん、修ちゃんだからいいの。修ちゃん以外だったら、絶対に先へは進まないもの」
 そこまで言われると正直引いてしまう部分もあったけど、今はもう素直に受け入れようと思ってる。僕もそうだけど、姉さんたちも恋愛経験は皆無だから、どうしても不器用になってしまう。そうなると、もう少し別のやり方があるのかもしれないことでも、真っ直ぐすぎて引かれる、という可能性もある。
「じゃあ、こっちも脱がすから」
「うん……」
 僕は、パジャマのズボンを脱がせた。
 もう姉さんを守っているものは、ショーツだけ。
「触るよ」
 一応そう言い置いてから、ショーツ越しに秘所に触れた。
「やん」
 秘所のあたりは、すでにしっとりと湿っていた。
「感じてたんだね、姉さん」
「だ、だって……修ちゃんとエッチできると思っただけで、体が勝手に反応しちゃってるもの。しかも、修ちゃんに触られてる。だから余計に感じちゃったの」
 僕は、ちょっとした疑問を投げかけてみた。
「姉さんも、ひとりでしたりしてたの?」
「う、うん。してたよ。修ちゃんのことを想いながらね」
 姉さんだって健康な女性だ。それくらいしていてもなんら不思議ではない。
「でもね、修ちゃん。ひとりエッチは、してる時はいいんだけど、終わったあとはものすごく虚しくなっちゃう」
 それはあるかもしれない。
「でも今は、修ちゃん本人が触ってくれてる。だから、虚しくなんかならない」
 僕も、その期待に応えなくちゃ。
「姉さん、脱がすよ」
「うん」
 さらに先に進むために僕は姉さんのショーツを脱がせた。
 一糸まとわぬ姿となった姉さんは、やっぱり綺麗だった。
「本当に綺麗だよ、姉さん」
「ん、ありがと、修ちゃん」
 恥ずかしいんだろうけど、それでも嬉しそうに微笑んでくれた。
「触るね」
 少し足を開いてもらい、直接秘所に触れた。
「んっ」
 柔らかな秘唇に指を沿わせる。
「あっ、んっ」
 中には触れていないのに、中からは蜜があふれてくる。
 ひょっとしたら、感じやすさで言えば瑞香姉さんが一番敏感かもしれない。
「しゅ、修ちゃん……」
 秘唇を開くと、ピンク色の入り口が露わになる。
「…………」
 姉さんは、恥ずかしさで目を閉じ、顔を逸らしている。
 僕は、まずは人差し指の第一関節くらいまで中に挿れてみた。
「んっ」
 姉さんの中はとても熱かった。それに、痛いくらいに締め付けてくる。
「あっ、んんっ、修ちゃんっ」
 軽く動かしただけで、姉さんは腰を浮かせて感じている。
 さらに奥まで進ませる。ついでに指の出し入れも速くする。
「だ、ダメっ、感じすぎちゃうっ」
 自然と足が閉じてくるけど、僕はそれを押しとどめる。
 あとからあとから蜜があふれてきて、次第にシーツを濡らしていった。
「…………」
 僕は指を抜き、今度は舐めることにした。
「やっ、そんなところ、舐めないでっ」
 なんとか押しとどめようとするけど、腕にも力が入っていない。
「ひゃんっ」
 僕は、舌先で秘所を舐めた。
「んんっ、ああっ」
 ぴちゃぴちゃとわざと音を立て、舐め続ける。
「んっ、修ちゃんっ、ダメっ、イっちゃうっ」
 そして──
「んっ……んくっ!」
 ピンと体が張り詰め、姉さんは達してしまった。
「ん、はあ、はあ……」
「大丈夫、姉さん?」
「う、うん、大丈夫……」
 少し虚ろな表情で、姉さんは頷いた。
 だけど、やっぱり姉さんは感じやすい。
「ん……はあ、うん、もう大丈夫。落ち着いたよ」
 姉さんはそう言って微笑んだ。
「今度は、ふたりで一緒に気持ちよくなろ。ね?」
「うん」
 僕も服を脱いだ。
「わ、修ちゃんのおっきくなってる」
 姉さんは、そんなことを言いながらまじまじと僕のモノを見ている。
「そ、そんなに見られるとさすがに恥ずかしいよ」
「だって、私のはもう修ちゃんにじっくり見られちゃったから」
 お互いさま、というわけか。
 僕は、ゴムを取り出し、モノに装着した。
「姉さん、いい?」
「うん、いいよ、修ちゃん」
 モノを秘所にあてがい、そのままゆっくりと挿れる。
「んっ……くっ」
 異物の挿入に、姉さんは顔を歪める。
 途中、わずかに抵抗があったけど、程なくして一番奥まで到達した。
「全部入ったよ」
「うん、わかるよ。修ちゃんのが、私の中に入ってる」
 姉さんは、僕の頬に手を添え、そのまま自分の方へ引っ張った。
「痛くはない?」
「思ってたよりも痛くないよ。だから、修ちゃんも遠慮しないで」
 痛みに関しては、かなりの差があるらしい。個別に確認したわけじゃないから本当のところはわからないけど。
 確かに、奈々はそれほど痛がってなかったけど、穂香姉さんや柚香姉さんは結構痛がってた。
 そういう風に分類するなら、瑞香姉さんは奈々と同じ方に分類されそうだ。
「じゃあ、動くね。つらかったら言って」
「うん」
 僕は、姉さんに軽くキスしてから動き出した。
「んっ、んっ」
 姉さんの中は、たっぷりの蜜のおかげでとてもよく滑り、それだけでも十分気持ちよかった。それに加えて締め付けが強いから、余計に感じてしまう。
「姉さんっ、気持ちいいよっ」
「私もっ、すごく気持ちいいっ」
 もう、止めろと言われても止められない。
「んんっ、修ちゃんっ、修ちゃんっ」
 次第に動きが大きくなり、速さは速くなってくる。
 湿った音と、肌と肌がぶつかる音、それにふたりの荒い吐息。
 全身で、今セックスしてるんだと認識できる。
「ダメっ、またイっちゃうっ」
「僕も、もうすぐ」
「一緒に、一緒にっ」
 一瞬、締め付けが強くなり──
「くっ!」
「んんっ、ああっ!」
 僕は、そのまま姉さんの中で果てた。
「はあ、はあ……修ちゃん……」
「はぁ、はぁ、姉さん……」
「好き……」
 僕たちは、そのままもう一度キスを交わした。
 
 姉さんは、すこぶる機嫌がよかった。ここまで機嫌のいい姉さんを見るのは、はじめてだった。
「ね、修ちゃん」
「ん?」
 姉さんは、僕の髪を撫でながら言った。
「修ちゃんはさ、私のこと、どんな風に見て、思ってたの?」
「姉さんのこと?」
 それは、あまりにも唐突な質問だった。
「修ちゃんが私たちに対して複雑な想いを持ってるのはわかってる。でも、それを修ちゃんから直接聞いたことはなかったから。こういう関係になったついでに、ちょっと聞いておきたいなって思って」
 どういうついでなのかよくわからないけど。
「ん〜、今だから言えるけど、瑞香姉さんのことは、穂香姉さんや柚香姉さんほど苦手じゃなかったよ」
「そうなの?」
「うん。だって、姉さんはちゃんと加減してくれてたから。あのふたりはもう常に全力だから、それが余計にプレッシャーになっちゃって。でも、姉さんはそんなことなかったから、一緒にいても楽だった」
「そっか」
 もちろん、頼りになるという意味においては、穂香姉さんにかなうはずもないけど、普段の生活においては、瑞香姉さんくらいがちょうどよかった。
「姉さんはさ、あまり余計なことを言ったりやったりしなかったでしょ? ただ僕を側にいさせてくれて。それがすごく心地良かったんだ」
 常に全力で干渉してくる穂香姉さんと柚香姉さん。そんなふたりと同じ屋根の下で暮らしているわけだから、安息の地というか、そういう場所が必要だった。
 家では、それが瑞香姉さんの側だった。
「まあ、たまに過激にというか、壊れちゃった時は、さすがに困ったけど」
「あれは、修ちゃんが可愛すぎるのがいけないのよ。私のせいじゃないわ」
 そういう言い逃れの仕方は、姉妹そっくりだ。
「逆に僕から訊きたいんだけど、どうして姉さんは穂香姉さんたちみたいにしなかったの?」
「それは、性格の問題かな。私は、お姉ちゃんや柚ちゃんみたいな性格じゃないから。だからどうしても二の足を踏んじゃうんだよ。本当は、ふたりが羨ましかったんだよ。修ちゃんにとっては迷惑だったかもしれないけど、自分の心のままに修ちゃんに接していられたんだから」
 客観的に見れば、そうなのかもしれない。僕も姉さんも、当事者だったから主観的にしか見られなかったけど。
「私にはふたりみたいなことはできそうになかったから、じゃあ、せめて修ちゃんの側にいようと思って」
「そのおかげで、僕は安心していられた、というわけか」
「うん、そうだね」
 最近はそうでもなくなったけど、それでも未だに僕には姉さんたちに対する明確な反応が出る。
 瑞香姉さんと一緒にいると、やっぱり落ち着ける。
「修ちゃんにとって、お姉ちゃんはどんな存在?」
「どんなって……大事な姉さんだよ。接し方に難はあったけど、姉さんがいなければ今の僕がいないのは間違いないから」
 本当にそう思う。姉さんが僕を守ってくれてなかったら、今頃どうなっていたか。考えるだけで恐ろしい。
「じゃあ、柚ちゃんは?」
「柚香姉さんは、言葉にするのは少し難しいかも」
「どうして?」
「柚香姉さんの僕に対する接し方って、必ずしも姉のものじゃなかったから。もちろん、年上で実際に姉だから基本的にはその範囲を超えることはないんだけど、たまにより近い感じを受けることがあったから。だから、僕にとって柚香姉さんは単なる姉というよりは、友達というか、そういう違う感情もあったかな」
「ふ〜ん、そうなんだ」
 姉弟だからって、その感情はそれぞれの立場のものだけとは限らない。
 そういうことから言うと、瑞香姉さんにはどこか母さんみたいなところも感じている。心地良い感じがあるからだろう。
「姉さん」
「うん?」
「ひとつお願いがあるんだけど」
「お願い? なにかな?」
「これからもさ、姉さんには僕の心地良い場所であってほしいんだ。奈々という彼女がいるから本来なら奈々に求めるべきなんだろうけど、でも、奈々は奈々だから。やっぱり姉さんの代わりにはならないんだ。姉さんにしかできないことだからね、それは」
「修ちゃん……」
 最近僕は、いろいろ考えるようになった。
 奈々と婚約までしてなにを今更という感じだけど、そういう状況だからこそ考えるべきだと思ったから。
 奈々には奈々の役目が、姉さんたちには姉さんたちの役目がある。そして、僕がそれぞれに求めているものも違う。
 誰ひとり欠けてほしくない。
 もちろん、奈々以外はいつまでも一緒にいられる保証はないけど。まあ、奈々もある意味ではそうかもしれないけど。
 だからこそ余計に、一緒にいられるうちにできることをやり、やってほしいことをやってもらう。
「そんなこと、改めて言わなくてもいいよ。私はずっとずっと、修ちゃんの側にいるんだから。私は、ずっと修ちゃんが大好きなんだから」
 そう言って姉さんは、僕をギュッと抱きしめた。
 だけど、裸のままでそんな風に抱きしめられると──
「あ、修ちゃん……」
「うっ……ご、ごめん……」
「ううん、嬉しいよ。修ちゃんが私のことをそういう対象として見てくれてるってことだから」
 姉さんは本当に嬉しそうだ。
「ね、修ちゃん。もう一回、しよ」
 そんな姉さんの顔が見られるのなら、それくらいのことはしてもいいのかもしれない。
 結局僕は、シスコンだから。
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